老人と海 (新潮文庫)

老人と海 (新潮文庫)

パブリッシャー
新潮社
価格: ¥420

老人と海 (新潮文庫)のレビュー

不屈のアメリカ魂
簡単に言えば老人が大魚と――半ば一方的な愛情をもって――根競べをする話だが、なかなかスリリングで、読み応えがある。

物語のプロットに複雑さはなく、文体は簡潔。
前半は少し忍耐力も要るが、後半は割とすらすら読める。
そこそこのイメージ力と理解力のある読者にとっては、決して難易度の高くない中編小説。
新訳が待たれる
それほどの長編というわけではないが、何十ページものあいだ、ほとんど一人の男の想いの中で壮大なストーリーが動かされていく。巨大な波に身をとられるように読み手はそれに巻き込まれる。なかなかできない体験です。難を言えば、魚ヘンの漢字が頻出して、鮪とか鰯とかもっと、じつは半分以上読めなかったのでそこはカン違いして読んでたかもしれません。総ルビで、できれば現代語に訳し直した新バージョンを望む。
命尽きるまで、ただ愚直に生きる
 勝利は儚い。一瞬で手をすり抜ける。しかし最善を尽くしたという誇りは、永遠に人間を支える。
 未来は儚い。一瞬で過去になる。それでも人間は、未来に希望を抱き続ける。
 なるほど生きることは罪深いことかも知れない。勝利は誰かの敗北なのだ。誇りは誰かの屈辱なのだ。
お互いに決して共有できない痛みがあるのだ。だが寄り添うことはできる。
老人が魚に、海に、少年に寄り添ったように。少年が老人に寄り添ったように。

 ヘミングウェイの死に、軽々しく言葉は吐けない。その痛みに寄り添えるほど、私は長く、深く生きていない。
ただ、文中の老人の言葉に、ヘミングウェイの本質を、理想を見る。
 「けれど、人間は負けるように造られてはいないんだ」
 「そりゃ、人間は殺されるかもしれない、けれど負けはしないんだぞ」

 苦境にある人にこそ、受け止めてほしい言葉だ。
講談社英語文庫版の方がオススメ
こちらのOld Man And The Seaを買うのなら、
講談社英語文庫版の方が小さくて持ち運びやすく、
価格的にもオススメです。
どうしてもペーパーバックサイズが欲しいのなら、
こちらでも良いと思います。
福田恆存の解説が出色だと思います
名著は名著ですが、内容はいまひとつ薄い感じがします。

それがなぜなのかを補うように解きほぐしてくれるのが、巻末の福田先生の解説です。日本人の読者にとっては、この解説をまず読むために本書はあるだろうと僕は思っています。

ライオンの夢で幕を閉じる本編のストーリーは僕も好きです。けれど屈折や沈殿が足りないですよね。

と、感じてしまうのはなぜなのだろうか、という、我ながらいまひとつ腑に落ちない、食い足りない気持ちを満たしてくれたのが福田先生の解説です。ここだけでも繰り返し読んでいます。